スポンサーサイト

--/--/-- (--)  カテゴリー/スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

もうはなさない 50

2015/06/17 (水)  カテゴリー/もうはなさない

次の舞台は何にするかなど、ミーティングをする為に集まった部室で、今や遅しとチャイムがなるのを待っていたキョーコは、ふと先ほどの光との会話を思い出していた。

「ねぇ、モー子さんは進路とかもう決めてる?」

まだ、3年になって1週間余り・・・・。
進路を決めている子は2年の時点で決めているだろうが、何も決めていない人たちもそろそろ将来の事を真剣に考えはじめる頃だろう。

「私は、出来れば演劇の出来る大学に行きたいのよね。お芝居続けたいし。」
「そっか。」

奏江はもう、やりたい事をちゃんと見つけているのだ。
そう考えると、少し焦ってしまう。

「琴南さんは大学でも芝居続けるんだ。」

突然話に入って来たのは、天宮だった。

「そのつもりだけど・・・・千織は?」
「私もお芝居続けたいんだけどね・・・・親がそれなりに名のある大学へ行けってうるさいの。最上さんは?」

突然話を振られ、キョーコはとっさに答えられない。

「進学するつもりだけど・・・・まだ・・・決めてないんだ。」
「だったらさぁ、一緒に明泉大に見学に行ってみない?」

突然の誘いにキョーコは驚く。
千織とは、あの事件以来なんだかんだで仲良く?なった。
好きな人が一緒ならそれなりに趣向も似ていてもおかしくはないだろうが、奏江は当初仲良くなる事には反対だった。

『あんたは人が良すぎなのよ!?下手すりゃ別れてたかも知れないのに。』

“昨日の敵は今日の友”にしてしまったキョーコの人の良さに奏江は呆れていた。

「最上さん、頭良いでしょ。まだどこかも決めてないんなら行ってみない?私の友達はみんな就職組だから大学の見学に行く人いないのよね。」

お願いと、強引に頼まれキョーコも無下に断る事もできない。
だが、蓮の大学に行ってもいいものなのかとキョーコは悩む。

「だったら私も行こうかしら。何だか面白そうだし。」
「それじゃ、来月にオープンキャンパスがあるから一緒に行きましょ。またメールするから。」

嬉しそうにそう言って、千織は後から来た友達の所に行ってしまった。

「モー子さん・・・・敦賀さんに話した方が良いかな?」

部活の帰り、千織の誘いを少し後悔しながら奏江にそう訊ねた。
やはり蓮の大学に行く事は気が引ける。
もし、自分が思っていた事が本当だったらかなりショックだ。
まさか、蓮に限ってそんな事を思っているとは思えないが・・・・。

「そうね・・・・・話してみれば?案外案内してくれるかもよ。」
「そうかな・・・。でも、学際に来て欲しくなさそうだったし・・・・迷惑かもしれないでしょ?」
「キョーコの頼みを断るくらい、本当にたいした学際じゃなかったんじゃないの?気にする事ないわよ。」

キョーコにはそう言ったものの、奏江は内心別のことを考えていた。
先ほどキョーコから聞いた蓮の大学での様子からして、蓮はキョーコに知られたくないのだろう・・・自分が大学でモテている事を。
いらぬ心配をさせたくないのが本音だろう。

「やっぱり、黙ってた方が良いかもね。」

突然,奏江は意見を翻した。
蓮がキョーコの事を心配しての事なら、考えられるのは只ひとつ。
それは、蓮の彼女だといえば、キョーコに被害が及ぶかもしれないと察したからだろう。

「どうして?」

そんな事とは思いもしないキョーコは、不思議顔で奏江を見る。

「黙って行って、驚かせるのも面白いじゃない?あの敦賀さんの驚く顔って想像できないし。」
「確かに・・・。でも怒られないかな・・・・。」
「キョーコだって、本当は行ってみたいんでしょ?」

誰だって好きな人の事ならどんな事でも知りたいと思うだろう。
好きな人が通う学校を見てみたいと思うのは当たり前の事。
そんな奏江の言葉に、キョーコは素直に頷いた。

続きを読む

もうはなさない 49

2015/05/13 (水)  カテゴリー/もうはなさない

散々な修学旅行先から戻ったキョーコは、母が家にいたことに驚いた。
尚の両親には帰る日にちを伝えてあったが、まさか仕事が忙しいといつも家にいなった母が待っているとは思いもしなかった。
遭難した時、現地に行かなかったのは、現実を見るのが怖かったからだろうと、尚の母親がこっそり教えてくれた事を思い出す。
キョーコの顔を見た母の反応は期待していたよりも遥かに薄かったが、それでもキョーコは嬉しかった。
昔は構ってもらえず寂しかったが、大人になるに連れて、母の事を少しずつ理解してきたつもりだ。
女でひとつでキョーコを育てる事がどんなに大変か・・・。

◇◆◇◆

「ごめんね、キョーコちゃん。早く帰りたいところなのに・・・・。」

新学期、高3になったキョーコはクラス持ち上がりだった為、今年も奏江と同じクラスになり嬉しくて仕方ない。
そして教育実習でやって来た実習生は顔見知りだった。

「いえ、今日の日直私ですから気にしないでください。光先生。」

冗談めかしにそう言って、キョーコは笑う。

「先生だなんて何だか照れくさいよ。」

キョーコは先程の授業で先生が集めたノートを、石橋光と共に抱えながら廊下を歩く。
いつもは日直に頼んでいるのだが、折角だからと実習生に持ってくるように頼んでいたのだが、小柄な光が持って行くにはさすがに可哀想な量だった為、手伝うことを申し出たのだ。

「それにしても、光さんが実習で来るなんでビックリしました。」
「俺も、キョーコちゃんがこの学校だったなんて、すっかり忘れてたよ。」

去年の夏に短期のバイト先で知り合った光が、教育実習でキョーコの学校にやってきたのだ。
海の家でのバイトは始めてだったので先輩である光に色々教えてもらっていた事もあり仲が良かった。

「光さんは先生になるんですか?」
「なりたいんだけどね・・・・これがまた狭き門って話しだし。それで今、保険代わりに塾のバイトしてるんだ。そう言えば、キョーコちゃんは進学するの?それとも就職?」
「進学するつもりなんですけど・・・・そう言えば、光さんは何処の大学でしたっけ?」
「俺は明泉大だよ。」

明泉大と言えば、蓮と同じ大学。
世間はなんて狭いんだろ。
蓮が通う大学に興味はある。
でも、去年の学園祭に蓮に行きたいと頼んだが、大して何もないからと連れて行ってもらえなかった。

「キョーコちゃんも来ればいいんだよ。そうすれば・・・・・って、キョーコちゃんが入学してきたら俺は卒業してるんだっけ・・・・・。」

そんな光の言葉に、キョーコは笑いながらも、内心同じような事を考えていた。
もう1年早ければ、蓮と楽しいキャンパスライフを送っていたのだろうか?

「俺、留年しようかな・・・・・。」
「光さん・・・・単位足りないんですか?」

光の告白まがいの言葉も、鈍いキョーコには伝わらない。

「・・・・・そんな事はないけど・・・・。」

そう言って、光は誤魔化すように笑った。

続きを読む

もうはなさない 48

2015/03/27 (金)  カテゴリー/もうはなさない

緊迫した空気が流れる中、キョーコは今から何が起こるのかとハラハラしていた。

「あんたさぁ・・・・キョーコに遭難中のこと聞いたか?」

挑発するような話し方に、キョーコの顔が曇る。
やはり尚は何処までいっても尚なのだと・・・・・。
蓮の事が気に入らないのは分かるが、幼馴染とし大人しく見守っていてくれと言ったばかりなのに・・・・。

「聞いたよ。キョーコに無理やりキスした挙句に凍死させようとしたんだってね。」

蓮の言葉に尚は唖然とする。

―――――キ、キョーコだと?こいつ何呼び捨てにしてんだよ!!

蓮がキョーコの事を今まで最上さんと呼んでいたのに、急に名前で呼んだことに尚は動揺する。
自分が熱で魘されていた間に、一体何があったのか気になってしょうがない。

「俺が彼女の名前をそう呼ぶ事に何か問題でも?」

そんな尚の動揺を感じ取ったのか、蓮は涼しい顔でそう返す。
そう言われてしまえば、その通りだけに尚は言い返す事が出来ない。

「それよりも、いつまで彼女の肩に腕を回しているつもりだ?いくら病人でも、そろそろ俺にも限度がある。」

刺々しい口調に変わったかと思うと、蓮はキョーコの肩から尚の腕を引き剥がした。
そして、キョーコは聞こえない所まで引きずっていき、部屋の隅で尚の耳元で囁く。

「告白してふられたんだろ?俺を挑発しても無駄だ。キョーコはちゃんと俺に何もかも話してくれたよ。それに、俺は彼女を許した。きさまのした事は許せないが、ふられたみたいだから今回は大目に見てやる。今度お前が彼女に触れたら、俺が雪山におまえを埋める。」

冗談とは思えない事を真顔で話し、蓮は尚を解放した。
その態度は、本当にキョーコの事を思っているのだと実感するには十分だった。

「そんなに熱くなるなよ・・・・。キョーコがあんたに合わせる顔が無いって言うから、ちょっと試しただけだよ。」

その言葉は半分は本当だが、もう半分はもしかしたらと言う淡い期待がなかったかと言えば嘘になる。
遭難した雪山で、自分の彼女が他の男と一晩を過ごした事を、尚なら絶対に疑う。
正直に話したところで、真意は当事者達しか知らないのだから。
だが、蓮はキョーコの話を信じ、そして許した。
揺るがない蓮の気持ちに、付け入る隙も無い。

「良かったな、キョーコ。寛大な彼氏でよ。」

冗談めかしにそう言って、尚はひらひらと手を振り病室から出た。
残されたキョーコは蓮の様子を伺う。

「つ、敦賀さん・・・・・・。」

その言葉に、蓮はうそ臭い笑顔で振り返った。

「キョーコ、俺と約束したよね。これからは名前で呼ぼうって。」
「うっ・・・・・・・・・・・・。」

確かに、遭難の事を話し謝ったキョーコを蓮が許す代わりに、お互い名前で呼び合おうと言われた。
だが、いくら彼氏とはいえ年上の名前を呼び捨てになど、キョーコには考えられない。

「そんなに俺の名前は呼びたくないんだ・・・・・不破の名前は呼ぶくせに。」

少し不貞腐れたように、蓮は横を向く。
完全に拗ねモードに入っているらしい。
だからと言って、急に呼び名を変えるのも恥ずかしい。

「でも、昨日敦賀さんゆっくりでいいからって・・・・・・・。」
「だから、敦賀さんじゃないだろ?蓮って呼んで。」
「・・・・・・れ、蓮・・・・・・さん・・・。」

真っ赤になりながらキョーコは何とか彼氏の名前を呼ぶ。
そのあまりの可愛さに、蓮はキョーコを抱き寄せた。

「今日はそのくらいで許してあげるよ。でも、そのうち慣れてね。」

キョーコのおでこに軽くキスを落とし、蓮は微笑んだ。

続きを読む

もうはなさない 47

2015/03/06 (金)  カテゴリー/もうはなさない

キョーコを落ち着かせる様に、蓮は再び椅子に座るとキョーコの手を握り締めた。

「落ち着いて。俺は何処にも行かないから。」

蓮の優しい言葉に、急に恥ずかしさが込み上げてくる。

「すみません・・・・・私ったら・・・・・・。」

自分の中で、ひとり考えひとりパニックになって、本当に心配ばかりかけている。
今から話すことはきっと蓮の表情を曇らせるだろう。
それがわかっていても、やはりちゃんと話さなければとキョーコは自分を落ち着かせるようにひとつ深呼吸した。

「私・・・敦賀さんに話さなければならない事があるんです。」
「何?」

脳裏の過ぎる嫌な想像に、動揺しそうになるのを何とか沈めて、蓮は平静を装いそう。

「実は・・・・・・」

キョーコは遭難した時の事を蓮に話し始めた。
山小屋で、尚と何を話し何をしていたのか。
蓮は、キョーコの手を握ったまま、ただ黙って話を聞いていた。

「それで・・・・告白されて・・・・・・・キスされました。」

その言葉に、繋いだ手から動揺が伝わってくる。
それがどちらの物なのかは、分からない。
蓮はその言葉に、密かに納得していた。
尚が運ばれて来た時、凍傷とは違う怪我を尚の唇に見た。
それは、キョーコがキスに抵抗して、噛み付いた後だったのだろう。

「で・・・・。」

少し震える声で、蓮が話しの先を促す。
キョーコは自分がその時思ったこと、そしてその場を逃げ出した事、そして寄り添うようにして眠った事を赤裸々に話した。
蓮には、包み隠さずちゃんと話しておきたかった。
この話を尚の口から蓮の耳に入るくらいなら、嫌われてもいい・・・・・自分の口から伝えたかった。
もし、最悪な結果になったとしても、後悔しないように。

「信じてもらえないかもしれないけど・・・・・・ショーちゃんとはちゃんと話をして・・・・・元の幼馴染に戻ったんです・・・・・・。」

言いながら涙が溢れる。
泣くなんてずるいと思いながらも、涙が止まらない。

「ごめんなさい・・・・・・・私・・・・・・私・・・・・・・。」

キョーコの気持ちは痛いほど伝わってくる。
蓮を裏切ったと言う思いが今、渦巻いているのだろう。

「最上さん、泣かなくていいから・・・・・。俺は最上さんの事を信じるから・・・だから泣かないで・・・・・。」

そっと手を伸ばし、キョーコの頬を伝わる涙を拭う。
泣きながら、それでも真実を話すキョーコを責める事などできるはずが無い。
その涙は蓮を想って流す涙なのだから・・・・・・。

続きを読む

もうはなさない 46

2015/02/14 (土)  カテゴリー/もうはなさない

眠っているキョーコの手を握り締め、蓮はこの温もりにもう一度触れられる事に感謝する。
捜索隊が出発して、山小屋の中で2人を発見したという一報が入ったのは、正午過ぎだった。
発見された時、キョーコは尚を抱きかかえ、涙を流しながら尚を早く助けてほしいと懇願していたらしい。
そのまま、2人は病院へと運ばれ軽い凍傷だったキョーコは点滴をしてもらい鎮静剤が効いているのか眠っている。
尚は熱が高い為、大事を取って別室で治療を受けていた。

「キョーコちゃんの様子はどうかしら?」

不安そうに病室に入って来た不破の母親は、遠慮気味にそう蓮に話しかけた。
これだけ心配そうにキョーコの手を握る蓮を、誰もただの知り合いとは思わないだろう。
入院の手続きも、不破の母親が預かって来ていた保険証があった為蓮が手際よく行っていた。

「薬がまだ効いてるみたいです。」
「そう・・・・・。さっき、冴菜ちゃんにも連絡して来たわ。ああ、もちろんあなたの事は話してないから・・・・・間違ってたらごめんなさいね、あなた、もしかしてキョーコちゃんの彼氏かしら?」

その問いかけに、蓮は気を使わせてしまったと思いながらも頷いた。

「キョーコちゃんは尚の事が好きなんだとばかり思ってたわ・・・・・。でも、こんなカッコいい彼氏がいたなんて・・・。」

尚の家族の事もキョーコから聞いている。
お隣同士、キョーコの母親のせいもあり、尚の両親が自分の両親のように接してくれるから嬉しいと。

「すみません・・・・・・。」

キョーコの事を本当の娘のように可愛がってもらっているといっていたことを思い出し、蓮は思わず謝った。
そんな蓮に、尚の母親は苦笑する。

「別に謝らなくてもいいのよ。キョーコちゃんの事、どれほど大切にしてるか、あなたを見てれば分かるわ・・・・・・。本当に、無事で良かったわ。」
「不破君はどうなんですか?」
「尚は、凍傷は軽いものだったけど風邪を引いたみたいね。いつも使わないような頭と体力を使ったから・・・・・。何とかは風邪ひかないなんていうのに・・・・・・。」

両親は、無事に帰って来たことを本当に喜んでいた。
冴菜にも電話で報告すると、行けなかった事を謝罪されたらしい。

「本当は、心配だったと思うの・・・・。でも、冴菜ちゃんの中にある何かが邪魔をして、素直にキョーコちゃんと接する事が出来ないのよ。敦賀さん、キョーコちゃんの事お願いね。この子は母親の愛情を受けずに育って来たから、甘える事を知らないの。物凄く我慢強いけど物凄く寂しがりやだから・・・・。」
「分かってます。目が覚めるまで側にいますから。」
「ありがとう・・・・・そろそろ戻るわ。」

扉が閉り、蓮は再びキョーコの手を握り締めた。

続きを読む

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。