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もうはなさない 54

2015/09/30 (水)  カテゴリー/もうはなさない

繋いでいるというよりは捕まれているといったほうが正しいかも知れない。
無言のまま、蓮はキョーコを連れて学内を歩いていく。
周りは、蓮が女の子の手を取り歩いていく姿に何事かと好奇の視線を送る。
だが、蓮は気にする事無く歩いていく。
その捕まれた手から、蓮の怒りが伝わってくるようでキョーコは話しかける事もできない。

――――― 光さん達・・・・驚いてたな・・・・・。

蓮がキョーコと付き合っていると言った瞬間、3人とも固まっていた。
その驚きの表情を思い出し、キョーコは聞こえない程度のため息をつく。

――――― やっぱり、私が蓮と付き合ってるって周りから見れば意外なんだ・・・・そうよね・・・私みたいなのが・・・・この人の隣にいるんじゃ似合わないわよね。

自分の腕を捕っている蓮の手に視線を移しながら、キョーコはその手を振り払えなかった。
階段を上がり、たどり着いたのは時計塔の屋上。
先ほど通った場所はからくりのような歯車がたくさんあった事を思い出しす。
どうやらそれは時計の裏側だったのだろう。
未だに手を離さないまま、蓮は床に腰を下ろすとキョーコの腕を引き、無理矢理座らされた。

「それで・・・・どうして今日来る事を黙ってたの?俺に怒られると思ったから?」

その言葉にキョーコは素直に頷いた。
蓮のため息が聞こえる・・・。
きっと呆れられたに決まっている。
もし嫌われたら・・・・そう思うだけで胸の奥が熱くなる。

「俺がキョーコにここに来て欲しくなかったのは・・・キョーコがそんな顔するのを見たくなかったから・・・・。」

そんな顔って今自分はどんな顔をしているのだろう・・・。
思わず、キョーコは自分の頬を両手で隠した。
怒っているのに、そんな可愛い仕草をされると表情が緩んでしまう。
蓮はひとつ咳払いをした。

「学際に連れてこなかったのは、学内にいればさっきみたいに声を掛けられるから、そんなところをキョーコに見せたくなかった。俺が逆の立場だったら絶対に嫌だから・・・さっきみたいに・・・。」

それは光達の事を言っているのだろう。
必死で探して見つけた相手が、楽しそうに異性と話していたら、それは気分のいいものではないだろう。
実際キョーコも、女子大生に囲まれる蓮の姿にを見たくなくて逃げたのだから・・・・。

「それに・・・・俺の彼女だって逸美に紹介しようと思ったら逃げ出すし・・・俺の事拒否されたみたいで・・・・・正直ショックだ。」

ため息交じりの言葉に、キョーコは涙目で蓮を見た。
そんなキョーコの髪を蓮はクシャリと撫ぜる。
なぜキョーコが逃げ出したのか理由は分かってる。
キョーコを不安にさせたのは自分だ・・・・。

「彼女は只の同期で友達だよ。」
「分かってます・・・・・。」
「本当に?」
「分かってますけど・・・・・逸美さんって綺麗だし、性格も良さそうだし・・・・・。」
「でも、俺が好きなのはキョーコだよ。」

その迷いのない言葉に、キョーコは自分がした行動を後悔する。
いつも、真っ直ぐにキョーコに言葉をくれるのに、自分の自信のなさが蓮に切ない顔をさせている。

「うまく言えないんだけど・・・・・あんなふうに綺麗な人たちに囲まれてる蓮を見てたら・・・・胸が苦しくて・・・・・悲しくなってきちゃって。」

キョーコは小さい声でごめんなさいと言いながら、蓮の胸にコツンと頭をもたげた。
そんなキョーコを蓮はそっと抱きしめた。



「そろそろ戻ろうか。」

ひと気のない場所でこのまま2人きりでいると理性を保つ自信がないと、蓮はさりげなくキョーコの体を自分から放すし、立ち上がるとキョーコに手を伸ばす。

「そうですね。モー子さんや天宮さんも心配してるだろうし。」

すっかり元に戻ったキョーコは蓮の手をとり立ち上がった。

「あそこに見えるのが講堂で、その向こうに見える白い建物がサークル棟。」

奏江がいるであろう学食に向かいながらキョーコは蓮から学内の案内をしてもらっていた。
この大学を志望するかどうかはまだわからない。
だが、蓮の通うこの大学に今、蓮と一緒に居るのだと思うと胸が高鳴った。

「何か聞きたい事ある?」

そんな事を考えていると急に蓮にそう質問された。
だが急にそんな事を言われても急には出てこない。

「そうですね・・・・・。」

何か聞く事はないかパンフレットを見ながら考えている時だった。

「あれ?敦賀君まだ居たんだ。」

その声にパンフレットから顔を上げると、そこには感じのいいスーツ姿の男性が立っていた。

「伊達先生こそまだいらしたんですか?」
「学生と違って色々やる事があるからね。」

蓮の言葉にそう言って苦笑いする。

「それで?横のお嬢さんはもしかして噂の彼女かい?」

伊達は蓮の横でパンフレットを持っているキョーコに視線を向ける。

「噂って何ですか?」

どうせろくな噂れはないのだろうと思いながらも蓮はとりあえず教授に尋ねた。

「うん。なんでも明泉のプリンスは女子高生と付き合ってるって。」
「何ですか、その不愉快な名称は。」

実際に呼ばれた事はないが、影で女子達がそう呼んでいるらしい。

「だって仕方ないだろう?君は学内一モテるんだから・・・・ってこれは失礼。彼女には面白くない話だったね。」

蓮の横で話を聞いていたキョーコの不安そうな表情に気づき伊達はゴホンと一つ咳払いをした。

「キョーコ、前に俺が学んでみたい教授が居るって話したの覚えてる?」

蓮もキョーコのどんよりした空気を察し慌てて話をふる。
その言葉にキョーコは頷いた。

「彼がその伊達啓文教授なんだ。」
「そうなんですか・・・。この方が・・・。」

蓮が学びたいと言っていた教授だったのかと、キョーコは改めて伊達を見た。
人の良さそうな笑顔の素敵な男性で教授と言うには若過ぎるような印象を受けた。
凄い人と言われても風貌からはピンとこない。

「そんな大した者じゃないよ。そんな事よりも・・・君はこの大学を受けるのかい?」
「受けるかどうかは、まだ・・・。」

伊達から直球で聞かれ、キョーコは素直な気持ちを口にする。

「大いに迷えばいい。だた彼氏がいる大学だからとかそういう基準で進路を決めるのはオススメしないよ。ええっと名前は?」

冗談めかしにそう言って伊達はキョーコに名前を求めた。

その時蓮の携帯が鳴った。
画面には社の名前が表示されていた。

「教授、ちょっと外します。」

蓮は2人から少しはなれた場所で社と仕事の話をし始めた。
そんな蓮の後姿を見ていると伊達が話を戻した。

「えっと、何を話していたかな・・・・そうそう、名前を聞いたんだったね。」
「はい、最上と言います。」

キョーコが名前を口にした瞬間、伊達の表情が一瞬変わった。

「も・・がみ・・。」

声にならない声でキョーコの苗字を口にした。
だが、キョーコの耳にその声は届いては居なかった。

「あ、あの・・・。」

何も返さない伊達に、キョーコはおずおずと声を掛ける。
その声に伊達は我に返った。

「ああ、いやすまない。懐かしい名前だったものだからつい・・・。」
「懐かしい・・・ですか?」
「うん。懐かしい名前だよ。昔同級生で最上さんって子が居たんだ。美人で勉強も出来て凛とした空気を纏ったひとでね・・・実は初恋だったんだけどね。」

そう言って伊達はどこか照れくさそうに笑う。
最上と言う名はそんなによくある名前ではないが特に珍しい名前と言う訳ではない。

「そうなんですか。」

キョーコはその時は特に気にも留めなかった。



「それで、ここが学食。違う場所にもう一軒あるけど、私はこっちの方が好きなの。だってこっちの方がオシャレでしょ?」

一方、奏江達は逸美に学内を案内してもらい、最後にキョーコと待ち合わせした食堂に来ていた。
学食と言う割には、オープンテラスのあるカフェのような感じ。
逸美の話によれば、もう一つの学食はどちらかというと、体育会系向きのガッツリ系のメニューが多いらしい。

「こっちはパスタとか洋食系が多いから、女の子が多いの。デザートも充実してるしね。」
「そうなんですか。」

昼食時間は少し過ぎているものの、のんびり本を読んでいる学生や恋話で盛り上がっているグループにまじって見学者も学食を味わっている為ごった返している。
奏江達もその中に混ざる事にした。

「逸美さんって、敦賀さんの事好きなんですか?」

唐突な質問に、驚いているのは奏江だった。
さすがというべきか、聞きにくい事をさらっと聞くその性格にある意味感心する。

「天宮さんだっけ?唐突ね。まぁいいわ・・・・確かに好きだけど、彼は私の事なんて興味ないのよ。彼女いるみたいだしね。」

千織と奏江をちらりと見ながら、切なそうにそう言って、飲んでいたアイスティーのストローで氷を突っつく。

「告白とかしないんですか?」
「告白したって、結果は見えてるわ。それで気まずくなるくらいなら、このままの方がいいわよ。」

その言葉に、千織は不思議そうな顔をする。

「何もしないで諦めちゃうんですか?」
「だって、仕方ないでしょ?彼女がいるのに・・・・人のものを取る趣味はないわ。」
「私だったら、奪っちゃうけどな・・・・・。」

その言葉に、奏江は眉をしかめる。
奪おうとして奪えなかったというのが本当の所だが・・・・相変わらず発言が大胆過ぎる。

「若いわね・・・・・。大人になるとね、いろんな事情があるのよ。だから、後先考えずに自分の気持ちだけ押し通す事は出来ないわ。」

羨ましそうにそう言って、逸美は笑う。

「でも、自分の気持ちを伝える事って大事だと思いませんか?」
「そうかもしれないけど・・・・それで誰かが傷つくとは思えない?」
「だからって、只黙ってその人の事を指をくわえて見てろって言うんですか?私には無理だったなぁ。」

そんな2人の会話を奏江はヒヤヒヤしながら聞いていた。
なにせ、その恋の対象者が親友の彼氏なのだから・・・・・・。
もし、こんな話をキョーコが聞いたら確実に凹むだろう。
そんな事を考えていると、食堂内が騒がしくなった。


To be continued

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