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もうはなさない 52

2015/08/06 (木)  カテゴリー/もうはなさない

重い足取りで歩くキョーコに対し、千織は楽しそうにキョーコたちを急かす。

「最上さん、琴南さん早く早く!?」

結局、蓮にオープンキャンパスに行く事を言いそびれてしまった。
もし、学内で会ったらなんと言えばいいのだろう。
話せば来ないで欲しいと言われそうで、結局言い出せなかった。

「千織、テンション高いわね。」
「だって、大学よ!?来年からここで過ごすって考えただけでもドキドキしちゃう。」

まだ受かってもいないのに、千織はこの大学に来る気満々の様子。
広い学内を、さきほど受付で貰ったパンフを手に歩いていく。
キョーコ達のほかにも、ちらほら高校生が見学に来ているようだった。
普段の大学とは違い、学生よりも高校生が多く校内の説明をする為に学生達も借り出されているようだった。

「キョーコ・・・・・そんな顔しないの。」
「だって・・・・まさか今日なんて・・・・・。」

今日蓮が大学に行くと言っていただけに、キョーコはヒヤヒヤ、ビクビクしていた。

「こんなに広いんだし、人も多いし大丈夫よ。それに会ったとしても怒らないわよ。」
「そうかな・・・・・・。」

心配そうな顔で奏江に言葉を返す。

「最上さん、敦賀さんに今日の事言わなかったの?」

振り返りながら千織はそう訊ねる。

「言わなかったって言うか、言いそびれたって言うか・・・・。」
「そうなんだ。まぁ、会えたら会えたで案内してくれないかしら。」

自分ごとのようにテンションをあげる千織を奏江は睨んだ。

「あんたね・・・まさかと思うけど、まだ敦賀さんの事狙ってるの?」

奏江の凄む言葉に、千織は肩をすくませる。

「まさか。もうとっくに諦めたわよ。だって・・・・。」

あの時、どれ程蓮がキョーコの事を好きなのか垣間見た。
それを見せられたら、諦めるしかないだろう。

「だって、何よ?」
「だって、あんな事見せ付けられたら・・・。」
「は、早く行かないと・・・大学は広いから回りきれないかも知れないいわよ。模擬授業とかも見たいし早く回らないと。」

慌てるように千織の言葉を遮ると、キョーコは奏江と千織の腕を組んで歩き始める。
その様子に、千織はこっそり笑った。
奏江には何があったのか詳しく話してはいない。
千織の目の前でキスされたなどと、恥ずかしくて言えなかった。
慌てるキョーコの態度に、何か話されていない事があると感じ取った奏江だったが、丸く収まった話を蒸し返すのもどうかと思い直して追求を諦めた。

「早く行くのはいいけど・・・。」

さっきの動揺で、きっとキョーコは蓮に会うかもしれないと言う事がすっかり抜け落ちてしまったのだろう。
それならそれで気づかせない方が良いかと奏江は思い直し、パンフレットを読み返す。

「それじゃ、どこから周る?」

3人で顔をつき合せ、時間が固定されている物を優先しながら周る順路を決めると歩き始めた。
しばらくキョロキョロしながら歩いていた3人だったが、千織が突然立ち止まった。

「天宮さん?どうかしたの?」

突然立ち止まった千織を心配してキョーコはそう訊ねる。
だが、千織の視線は先方を見ている。
何を見ているのかと、キョーコは気になり視線をそちらに移す・・・・。
その先には、遠巻きに女子が誰かを囲んでいて、その中心には綺麗な女性とその友達なのか数人となにやら話し込んでいる蓮の姿があった。



「つるがさ~ん!?」

固まるキョーコの脇をすり抜けるように、千織が手を振りながらそちらに駆け寄っていく。
奏江も驚いてそちらを見ていた。
蓮も周りにいた女子大生達も、そのさらに外を囲む女子達も、いっせいに振り返る。
千織の姿を確認した蓮は、その後方にいるキョーコと奏江に気が付き、女子大生達に何かを告げると優雅な足取りでこちらへとやって来た。

「3人そろってどうしたの?」

爽やかにそう言いながら蓮は明らかにキョーコに話しかけている。
そのうそ臭い紳士スマイルが突き刺さる。

――――― やっぱり・・・・怒ってる・・・・。

俯くキョーコに代わり、奏江が説明しようと思ったが、その前に千織が蓮の前に歩み出た。

「私達、今日はオープンキャンパスに来たんです。まさか敦賀さんに会えるなんて凄い偶然。」

その声は弾んでいる。
もうその気はないと言っていたが、いまだに蓮に興味があると思われても仕方がないだろう。

「そうなんだ。それじゃ、俺が案内してあげようか?」
「本当ですか!?」

そんなやり取りに、さっきの綺麗な女性が面白くなさそうに声を掛けてきた。

「蓮!?そんな暇あるんなら手伝ってよ。」

その言葉に、キョーコの肩がかすかに揺れた。

「逸美・・・・さっきも言っただろ?俺に頼む前に自分で何とかしろよ。まだまだ時間はあるんだから。」
「何よ。蓮のケチ。」
「ケチで結構。最初から人に頼ろうなんて甘いんだよ。それに、逸美なら十分間に合うと思うけど?」

そう言われれば、逸美は何も言い返せないらいく、悔しそうな表情を浮かべている。

「分かったわよ。でも、もし危なくなったら手伝ってよね。」
「考えておくよ。」

その会話が、2人の仲の良さを垣間見せる。
一体どういう関係なのか、気になるものの聞くことが出来ない。
そんなキョーコの心情を知ってか知らずか千織が不躾に質問した。

「敦賀さん、このひと誰なんですか?まさか、彼女?」

蓮の彼女が誰か知っているくせ、千織はわざと困るような質問をする。
それはきっと、あの時の仕返しなのだろう。

「まさか・・・・・。彼女は同じ学部なだけだよ。」
「残念ながら彼女じゃないの・・・・。私はなってあげてもいいんだけどね。」

冗談なのか本気なのか、そう言って逸美は蓮の肩に手を置く。

「ミス明泉の百瀬さんにそう言ってもらえるなんて光栄だね。でも、学内中の男に睨まれたくないから遠慮するよ。」
「よく言うわ。学内一モテる蓮が、良くそんな事言えるわね。もう十分睨まれてると思うけど?」

言葉とは裏腹な楽しそうな会話に、キョーコの気持ちは沈んでいく。
自分の知らない大学内での蓮の事を知っている逸美。
なんだか、蓮を遠く感じる。
キョーコとはこんなテンポの会話はしないから。

「それで・・・・彼女達は?まさか・・・・この中に蓮の彼女がいたりして。」

どこか楽しげな逸美の言葉にキョーコはドキッとする。
品定めするかのような視線がいたたまれない。

「どうしてそう思うの?」
「だって、噂になってるわよ、蓮が女子高生と付き合ってるって・・・・。」

逸美の視線は奏江を捕らえていた。
この中で、蓮と釣り合いそうなのは奏江くらいだと踏んだのだろう。
そんな逸美の何気ない言葉さえも、キョーコには重く圧し掛かる。

「噂じゃなくて本当なんだけど・・・・折角だから紹介しとこうかな?「ごめんなさい・・・・私ちょっとトイレに行って来るから、モー子さんたちは先に行ってて・・・・。」

その場にいるのが居た堪れなくなったキョーコは、蓮の言葉をさえぎると、奏江が止めるのも聞かずに走り去った。

「最上さん、顔色さえなかったけど大丈夫かしら?」

千織の言葉に、奏江も心配になる。

「私ちょっと見てくるわ。後で、学食で合流しましょ。」
「分かったわ。それじゃ、私は敦賀さんと一緒に・・・・・って、あれ?敦賀さんどこ行っちゃったの?」

気が付けば、蓮の姿はもう何処にもなかった。

「蓮なら、急用を思い出したって凄い勢いで・・・・・・・。」

あれほどすばやい蓮を初めてみたと、逸美は笑う。
逸美の言葉に、奏江は自分が行く必要はないと悟った。

「千織、見学の続きでもしてましょ。そのうちあの娘も戻って来るだろうし。」
「そうね・・・ちょっと意地悪し過ぎちゃったかしら?」
「あんまりあの娘をからかうような事しないでよね。」
「ちょっとぐらいいいじゃない。このくらいしたってバチは当たらないでしょ?」

残された2人はキョーコが立ち去った理由を知っている。
その原因は未だにここに居た。

「ねえ、良かったら学内案内してあげよっか?私もまだ蓮に用事があるし。」
「でも・・・・・。」
「いいじゃない。在校生に説明して貰った方が情報収集できるし、ぜひお願いします。」

出来れば、キョーコが戻って来た時に逸美にはいて欲しくない。
そんな奏江の心情を知ってか知らずか、千織は遠慮なく逸美に案内を頼んだ。


To be continued

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