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古城の華(4)

2009/09/01 (火)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

キョーコを迎えに来た蓮と社は、ノックして出てきた人物に驚いた。
出てきたのはキョーコではなく、由美子だったのだ。

「キョーコちゃん・・・・・・の部屋だよね?ここ。」
「それが・・・・・実は昨日・・・・・・・・・。」

改めて教えられた部屋に足早に向かう。
由美子の話から、部屋を換わったことを知らされた2人はそれぞれの思いを胸に歩いていく。
―――――まったく、キョーコちゃん・・・・・部屋換わったんなら教えてくれなくちゃ・・・・・・。
―――――まったく・・・・・最上さんは・・・・・幽霊が出るなんて部屋になんか泊まって・・・・・何かあったらどうするんだ!?

改めて扉をノックすると、ひょっこりキョーコが顔を覗かせた。
その顔は少し疲れているようにも見える。

「キョーコちゃんおはよう。聞いたよ?由美子ちゃんと部屋換わったって。言ってくれないと困るよ。蓮が間違って訪ねていったら大変な・・・・・・。」

社はそこで言葉を止める。
蓮が横から冷たい眼差しで無言の威圧をしてくるから、最後まで言葉がいえなかったのだ。

「す、すみません・・・・・・・。つい・・・・・うっかり。」

その様子を蓮は黙ってみている。
蓮にも怒られるのかと思いきや、何も言わない事に逆に心配になり思わず聞かずにはいられない。

「あの・・・・・・敦賀さん・・・・・・やっぱり怒ってますか?」
「えっ?いや・・・・・最上さん、体はなんとも無いの?」
「体ですか?別になんとも無いですけど?」

蓮が何を言いたいのか分からず、小首をかしげる。
察した社が蓮の代わりに説明してくれた。

「心配したんだよ。幽霊がでる部屋と換わったんだって?」
「はい・・・・・。」
「で、どうだった?」

社は心配しつつ、興味もあるようだ。
蓮も非科学的な事ではあるものの、何があってもおかしくない世の中だけに心配している。
話は朝食をとりながらも続いていた。


「実は・・・・・・会ったんです。お姫様の幽霊に・・・・・。」
「会ったの!?」
「はい。階段の絵のお姫様で・・・・・その・・・・・・。」

キョーコは言いにくそうに口ごもる。
昨晩、お姫様のお願い事をされたキョーコは困ってしまっていた。
彼女の話では、このお城に住んでいたお姫様で名前はエミリア・フォン・プロイセン。
エミリアは身体が弱く、外に出れない為、いつも部屋から外を見る事しかできなかったらしい。
そんな彼女はキョーコに“恋がしてみたい”と言ったのだ。
―――――病弱で、恋を知らないまま亡くなったのかしら?だから成仏できずにここにとどまっているってこと?・・・・・・・可哀想すぎる・・・・・・。

「私、協力するわ!?その願い、ぜひ私に協力させて!?」

そう言いながら幽霊に抱きついたのだった。
恋は二度としないと誓ったキョーコだったが、余りにも可哀想に思い引き受けてしまったのだ。
キョーコがこのホテルに滞在している間に、エミリアが気に入った人とデートするのを手伝うと。
もちろん、デートをするのにキョーコの体を借りて。

「・・・・・・・・という訳なんです。」

その言葉に別の意味で固まる2人。
社は恐ろしくて蓮の顔をまともに見れない。
蓮は微妙に顔を引き攣らせている。

「あ、あの・・・・・・やっぱり、信じてもらえませんよね・・・・・。」

ガックリうな垂れるキョーコに社が慌ててフォローする。

「キョーコちゃん・・・・・・・驚いたけど・・・・話は信じるよ、信じるけど・・・・・その・・・・・・。」

社はいいにくそうに蓮をチラリと見やる。
蓮は未だに何か考え込むように、キョーコを見ようとしない。
それがかえってキョーコの心配を煽る。

「す、すみません・・・・・・。敦賀さんにはご迷惑かけませんから。」

その言葉に蓮はハッとして、キョーコを見た。
迷惑をかけないという事は、蓮は除外と言うことだろうか?

「いや・・・・・それはいいんだけど・・・・・どうやって相手を見つけるの?」
「それは・・・・・・私がいろんな人と話してみて、エミリアが波長の合う人を見つけるらしいです。」
「ってことは・・・・・・お姫様ここにいるの?」

社はキョロキョロとキョーコの周辺を見る。
が、見えるはずも無く少しつまらなさそうな社。
それと反対に、蓮はキョーコの事を心配している。

「最上さんに害は無いの?よく生気を吸い取られるとか言うけど?」
「それは・・・・・今のところ大丈夫です。話すのは夜ですけど苦じゃないですし。私体力には自信あるんです。」

力強く拳を握るキョーコに半ば呆れる。
体力云々の話をしているわけではない。

「最上さん・・・・・そういう問題じゃないと思うんだけど・・・・・・。」
「は、はぁ・・・・・・すみません。」
「まあまあ、とにかく、俺らでできる事があったら協力するから。な、蓮。」

社はウキウキしている様子で、蓮に同意を求める。
言われた蓮は、ため息をつきながらもキョーコに協力する事にした・・・・・・・がこの後激しく後悔することになる。


To be continued

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