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もうはなさない 18

2013/04/25 (木)  カテゴリー/もうはなさない

文化祭が近づき、誰もが慌しく準備に追われていた。
キョーコ達のクラスは、おとぎ喫茶などというカフェに決定。
白雪姫やシンデレラなど、おとぎの世界の住人のコスプレで接客する事になった。

「もー!?だからってどうして衣装は自分で作らなきゃいけないのよ!?」

ぼやきながら、奏江はくじ引きで当たってしまった衣装を危ない手つきでを縫っている。
その横では、キョーコが慣れた手つきで衣装を縫いながら、奏江の言葉に苦笑した。

「あんたはいいじゃない・・・・。とりあえず主役だし・・・・・私なんて脇役よ、脇役。」

奏江が引き当てたのはシンデレラに登場した魔法使いだった。

「そんな事言ったってくじ引きだったし・・・・私だって、どうせ主役ならシンデレラと白雪姫とかがよかったなぁ。」

お姫様の綺麗なドレスを着たかったのだが、キョーコが引き当てたのは赤頭巾。
なので、衣装はドレスではなくフード付の赤いマントに赤いワンピースとそれに合わせたエプロン。
ワンピースは既製品でもまかなえるがキョーコは折角だからとフードとお揃いの布で作った。

「確かに華やかさには欠けるけど・・・でも私よりマシじゃない。私なんて黒いマントに黒いワンピースと帽子で、真っ黒づくしよ。」
「ついでに魔法の杖もね。帽子はさすがに大変かも・・・・・。でも、他の人達よりましなんじゃないの。」

白雪姫やシンデレラ、王子様など、主役級に選ばれた人達は衣装にてんやわんやしている。
動物担当になった人達は、きぐるみをどこで調達してくるか話し合いが行われていた。

「確かにね・・・・・。そう言えば、あんた演劇部の衣装も担当ししてなかったっけ?」
「それならもう縫い終わったから、今度衣装合わせしてもらって少し手直ししたら完成だよ。それより今はクラスの衣装作らなくっちゃ。」

キョーコも裁縫の腕を変われ何着か男子から頼まれている。
今は白雪姫の王子様の服を頼まれ製作中なのだ。

「そんなの手伝うんなら、私の衣装手伝ってよ。」
「無理だよ・・・・・。あと3着頼まれてるんだから・・・・・。」

人のいいキョーコは頼まれたら断れない為、結局5人分の王子や執事などの衣装を作ることになったらしい。

「まったく・・・・・・。そんな王子様の服ばっかり作って・・・・・・。王子といえばさぁ、あの後どうなった?」
「あの後って?」

王子で何か思い出したのか、奏江は突然話を変えた。
でも、キョーコには何のことかよく分からない。

「こないだキョーコの家に行った時の・・・・・。」

そこまで言われて何が言いたいのかようやく理解する。

「ショーちゃんならあの後、話してないわよ。」
「そうなの?」
「うん。メールも電話も来なくなったし、モー子さんがガツンと言ってくれたのが堪えたんじゃないかな。」

事情を知らないキョーコはそう言って奏江に感謝する。
だが、奏江は表情を曇らせた。
本当は、奏江が話している途中で何か思ったのか尚のほうから帰っていったのだ。
でも、戻ってきた時に居なかったので、キョーコは奏江が追い返したと思い込んでいる。
何があったのか話すべきなのかもしれないが、もしかして尚に余計な事を言ったかもしれないという負い目があった為、奏江は言えずにいた。

「そっか・・・・・で、文化祭に敦賀さんは呼ぶの?」

突然、蓮の名前を出されキョーコは驚く。
そういえば蓮にはまだ話していなかった。

「わ、わかんない。まだ、話してないし・・・・・・それに・・・・。」
「それに何よ?“彼氏がいるがみんなにバレちゃう”ってまだ思ってるの?」

返事はなかったものの、俯くキョーコを見ていればそうですといっているようなものだ。
呆れたようにため息をつくと席から立ち上がった。

「ちょっと気分転換しに行かない?ずっと針仕事なんてしてられないわよ。はやく!?」
「えっ、ちょっとモー子さん!?」

戸惑うキョーコを尻目に奏江は教室を出て行く。
全クラス文化祭の準備の為、ウロウロしてても注意される事はない。
キョーコは縫っていた衣装を置くと、慌てて奏江を追いかけた。
途中、自販機でパックジュースを買い、やって来たのは演劇部の部室だった。

「ここなら誰もこないでしょ?それで・・・・まだ思ってるわけ?」

急に本題を突きつけられキョーコは返事に困る。
確かに前はそう思っていたが、少し心境に変化があった。

「それは・・・・この前敦賀さんが心配して来てくれたでしょ?あの時に、私反省したの・・・・・。そんな事思ってたら敦賀さんに悪いなって・・・・・。」
「少しは自覚したんだ。」

パックにストローを挿しながら奏江はキョーコに言葉を返す。
ようやく自覚してきた事が奏江にはうれしい。
キョーコが自分自身を卑下するということは、親友の奏江をも否定されている気がする。
もっと自分自身を好きになってほしい。

「うん。モー子さんの言うとおり、もう少し自信を持ってみる。そうじゃないと私の事を好きだって言ってくれる敦賀さんに失礼だって思ったの。それに、私も胸張って敦賀さんの事好きでいたいし。」
「そうそう、周りが何言ったって関係ないわよ。大事なのは二人がお互いにどう思ってるかでしょ?それに、誰だって不安を抱えて付き合ってると思うわよ?彼氏にしろ友達にしろ・・・・・。」

確かに、自分以外の心なんて誰にも分からない。
だからこそ、時には言いたいことを言い合って、間違っていれば間違っていると言う事も大事なのだと思う。

「モー子さん、ありがと。私、モー子さんと友達でよかった!?」

そう言って奏江に抱きつくキョーコを拒みながらも、内心嫌ではない。

「それじゃ、文化祭に誘いなさいよ。私も生の敦賀さん見てみたいから。」
「えっ・・・・・やっぱり呼ばなきゃダメ?」

突然現実に引き戻され、キョーコは戸惑う。

「私の事、親友ですって紹介してくれないの?」

寂しそうに呟くと、キョーコは“親友”という言葉にくいついたのか、さっきまでの戸惑いもどこ吹く風。

「紹介するする!?絶対紹介するから!?」

そう言ってうれしそうに奏江の手を握り締めた。

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もうはなさない 17

2013/04/14 (日)  カテゴリー/もうはなさない

宿題を一緒にしようと奏江はキョーコの家にきていた。
と言っても、キョーコの宿題を横で丸写しているだけで、自分で解いているわけではない。

「そろそろ休憩しよっか。クッキー焼いたから持って来るね。」

書き写す奏江にそう言うとキョーコは部屋を出て行った。
その姿を見送り、奏江は背伸びをしながらそのまま後ろに倒れこんだ。

「疲れたぁ~。写すだけでも面倒なのに、あの子ったら良くまじめにやってるわよね。」

ひとりぼやいていると、ベランダの方から何やら声と共に窓を叩く音がする。
何事かと、奏江は起き上がり音の方を見た。

「何であんたがそこにいるのよ・・・・・。」

そこには、休日ぐらい顔を見たくない人物が窓を叩いていた。

「琴南!?ここ開けてくれよ。」

窓を叩きながら、奏江に訴えかけてくる。

「いくら幼馴染だからってこんな所から来るってどうなのかしらね?」

呆れたように、その様子を見ていた奏江はベランダに近づいた。

「何やってるのよ、そんな所で。キョーコの宿題でも写しに来たわけ?」
「いいから、開けろよ。」

声を荒げ偉そうにそう言われ、鍵に手を掛けた奏江はその手を離して自分の前で腕組みするとニヤリと笑った。

「それが人にものを頼む態度なのかしら?」
「いいから、早く開けろって!?キョーコが戻ってきちまうだろうが。」

部屋の扉がいつ開くかヒヤヒヤしながら奏江を怒鳴りつける。
尚はここ数日、こうしてキョーコに会いに来ていたのだが、あの日の事が許せないのかキョーコにずっと無視されていた。
携帯も出ないし、メールを送っても返事も返ってこない。
学校で声をかけようにも、クラスも違うし取り巻き達が居る手前キョーコに会いに行くこともままならなかった。
普段なら絶対に持っていかない回覧板を持って訪ねても、無言で回覧板を掴むとそのまま扉を閉められた。
これでは取り付くしまもない。
今までならどんなに喧嘩しても、どんなに尚が悪くてもキョーコから謝って仲直りして来た。
それなのに、突然現れた彼氏などという存在で、キョーコが自分の事を許さない事が尚には面白くない。

「何でキョーコが来たらまずいのよ?」

事情の知らない奏江は小首をかしげる。
キョーコの部屋を訪ねて来たくせに、本人がいるとまずいなんて理解できない。
どうせまた、何かやらかしたに違いないと奏江は尚を軽く睨んだ。

「あんた、キョーコに何かしたのね?」

図星を指され、尚は慌てて言い訳をする。

「べ、別に大した事はしてねぇよ。それなのに、この俺様を無視するなんて、キョーコのくせに生意気なんだよ!?俺様がわざわざ忙しい暇をぬって来てやってるって言うのに。」

偉そうなのは気に食わないが、いつまでもそこに居られても困ると、奏江はベランダの窓を開けようと再び鍵に手を掛けた。

「モー子さん、開けちゃダメ!?」

急に大きな声がし、驚いた奏江は声のする方へ視線を向ける。
そこにはお茶とお菓子をお盆に乗せたキョーコの姿があった。

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もうはなさない 16

2013/04/07 (日)  カテゴリー/もうはなさない

車内はいつにない緊張感に包まれていた。
無言で車を走らせる蓮の横顔を伺いながら、キョーコは恐る恐る声を掛ける。

「あの・・・・敦賀さん、やっぱり怒ってます?」
「怒ってないよ。その質問、これで3回目だね。」

何度となく同じ質問を繰り返すキョーコに蓮は笑う。
その笑顔はいつもキョーコに見せてくれるやさしい笑顔ではあるが、どこか硬い。

「そんなに怒ってるように見える?」
「見えるというか・・・なんて言うか・・・・。」

言葉で言い表すのが難しいとキョーコは言葉を濁す。

――――― 平気なふりしてるのに、何でわかったんだろ。

何とか押しとどめている黒い感情をキョーコに見抜かれている事に驚いた。

「ごめん、そんなつもりはないんだけど。」
「いえ、元はといえば私が悪いんです。」

尚さえ部屋に入れなければこんな事にはならなかったのに。
自責の念にかられていたキョーコだったが、あることに気が付いた。

「そういえば、敦賀さん・・・・急用があったんじゃないんですか?」

電話に出られなかったのは、急用の為車に乗っていたと言っていたのに、自分を乗せていて大丈夫なのだろうか?
心配になったキョーコは運転している蓮の横顔に話掛ける。

「急用ならあったよ。今がそうだから。」
「今?ですか。」

鈍いキョーコは意味がわからず小首をかしげる。
その様子に、蓮は再びふわりと笑った。

「最上さんに会うのが急用。」

その言葉を理解したキョーコは真っ赤になって窓の外を見た。

――――― また、そんな恥ずかしい事をサラッと・・・・・。

「最上さん、ちょっと降りて話そうか。」

気が付けば、車はいつの間にか駐車場に停車していた。
助手席のドアを開けてもらい、キョーコは車を降りる。
そこは、キョーコの家から車で10分ほどの場所にある大きな公園だった。

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