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MasterandAervant 62

2012/07/07 (土)  カテゴリー/Master and Servant 全62話完結

部屋に取り残されたキョーコは気まずさから蓮の顔をまともに見る事ができない。

「キョーコ・・・・久しぶりだね。元気にしてた?」

久しぶりに名前を呼ばれ、胸の奥がざわつく。

「ご無沙汰してます。」

なるべく視線を合わせないように、キョーコは営業スマイルで挨拶を返す。

「俺に用って何?」

その言葉に、キョーコは気持ちを立て直す。

――――― そうよ・・・これを外して貰う為にきたんだから。

胸の前で右手を左手で握り締めながら、キョーコは意を決したように息を吸い込んだ。

「・・・実は、これを返し忘れたので・・・。飛鷹君から聞きました。これ、はめた人にしか外せないって・・・。」
「ああ、そう言えばそうだったっけ?それで?」
「外してください。私がこれを持っている資格はもうありません。私はもうあなたのガードではないんですから・・・だから・・・返したいんです。」

右手を差し出しながら、キョーコはそう言うのが精一杯だった。
だが、蓮はキョーコの差し出した手を掴もうとはしない。

「蓮様?」

ただ、じっとキョーコを見つめる。
その瞳に囚われたら、心の奥に封印した気持ちが溢れそうで、キョーコは視線を外した。

「俺が何もかも捨てたって聞いた時、どう思った?」

突然そう聞かれ、キョーコは少し驚く。
誤魔化しなど出来ない雰囲気に、キョーコは仕方なく正直に思った事を口にする。

「はっきり言って、無謀だと思いました。折角今まで苦労して築きあげたものをあっさり捨て去って・・・社さんに聞きました。どうしても手に入れたいのもがあるから・・・その為にすべてを捨てたって・・・。」

それが何なのかは聞かなかったが、人生をかけてまで手に入れたい何かがある事がキョーコには少し羨ましい。
自分は手に入れたかったものを、人生の為に手放したのだから・・・。

「無謀か・・・確かに無謀かもしれない。でも・・・何もかも捨てて・・・なんの柵もない人間にならないと手に入らないものがあるんだ・・・どうしても手に入れなきゃならないものが・・・。」

その瞳はキョーコを映し出す。
愛おしそうに見つめられ、キョーコは目のやり場に困り視線を彷徨わせた。

「あ、あなたなら・・・きっと手に入れられますよ。」

そう言うのが精一杯だった。
だが、蓮はキョーコの言葉に少し驚いた後、ふっと笑みを浮かべる。

「キョーコもそう思う?」
「ええ、あなたは有言実行するタイプですから・・・・・。」

キョーコの言葉に、蓮は益々笑みを深める。

「それじゃ、有言実行しておこうかな。」

言うが早いか、蓮はキョーコの差し出したままになっている手を取るとそのまま自分の方に引き寄せた。

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MasterandAervant 61

2012/07/02 (月)  カテゴリー/Master and Servant 全62話完結

突然真実を聞かされ、キョーコは顔には出さないものの、内心その事ばかり考えていた。
せめて、もう少し早く聞いていれば・・・・時折そんな思いが生まれたものの知っていたとして、あのまま蓮の側にいたかと自問すれば、きっと答えはノーだっただろう。
生真面目な性格の自分を呪ってみた所で、そう簡単に性格が変わるわけではない。

「ねぇ・・・お姉様・・・・・聞きたい事があるんだけど・・・・・。」

週末の予定がなかったマリアは、以前できなかったお菓子作りをキョーコに頼んだ。
オーブンにクッキー生地をセットし、ひと段落着いた頃マリアが言いにくそうにそう切り出した。
お茶の用意をしはじめたキョーコは改まったマリアの様子に小首を傾げる。

「あの・・・・あのね・・・・・。」

そう言いながら、マリアは大きく息を吸い込んだ。

「お姉様は、蓮様の事どう思ってるの?」

突然の質問に、キョーコは唖然となる。
まるで心の中を見透かされているかのような言葉に、キョーコは言葉が出ない。
此処に来てからの半年、マリアが時折何か言いたげな顔をしているとは思っていたが・・・。

「だって・・・私は蓮様の事が好きだもの。だから私には聞く権利があると思うの。」

素直に「好き」と言えるマリアがうらやましい。
返答に戸惑うキョーコの姿に、マリアは申し訳ない表情を浮かべる。

「ごめんなさい。困らせたい訳じゃないの・・・・ただね、蓮様・・・敦賀のお屋敷を出てヒズリ家には戻らずに1からやり直すって聞いたから・・・・。」

信じがたい言葉に、キョーコは持っていたカップを落としそうになる。

「そんな・・・だって、蓮様は・・・。」

誘拐事件で蓮がまったくの別人として世間を欺いてきた事が報道され、それは命を狙われる事を警戒しての事だったと発表。
世論も今回の誘拐事件で、その理由に納得し同情の声さえ聞かれた程だった。
あれから半年・・・漸くそんな話題も過去のものとなり、これでいつでも堂々とヒズリ家に戻れるはずと考えていたのに・・・・。

「あの人・・・一体どこまで暢気なの・・・・。」

頭を抱えたくなる心情で、キョーコは呆れ果てる。
あんなに苦労して手に入れた地位をあっさり捨てる辺り、蓮らしいといえば蓮らしいが・・・。

「でね、蓮様暫く自分の事を誰も知らない国に行く事に行く事になったから・・・私、見送りに行きたいの。でも、お姉様は蓮様に会いたくないかもしれないと思って・・・・・。」

遠慮がちにキョーコの様子を窺うマリア。
誘拐事件の後、てっきりキョーコは蓮の元に帰ると思っていた。
それなのに、別れも告げずにキョーコは姿を消してしまった。
行方がわからず心配していると不破から迎えに来るよう電話が掛かってきたのだ。
最初は不破の言いなりのようで癪だったが、あの日蓮の落ち込みようを目の当たりにしたマリアは、2人の間に何かあった事を悟り、キョーコがまたいなくならないようにと、強引ではあったが自分のガードを引き受けさせたのだ。

「お姉様・・・もう蓮様の事嫌いになったの?だから蓮様のお屋敷に帰らないの?」

まるでガラス細工を扱うように、マリアはキョーコの様子を窺う。
そんなマリアの様子に、年下にこんなに気を使われると、キョーコは自分が情けなくなる。

「・・・マリアちゃん・・・・ごめんなさい・・・私・・・自分の事ばかり考えてしまって・・・周りにもっと目を向けるべきだったのよね。」

奏江や宝田の言う事を素直に受け入れられなかった。
でも、キョーコの思惑に関係なく、こうして心配してくれる人達がいる。
その事をマリアに気づかされ、キョーコは心の中で感謝した。

「マリアちゃんには正直に話すわ。」

キョーコはマリアの向かいに座ると誘拐事件のあの日にあった事をマリアに話した。
好きだけど離れた訳、そして今はもう吹っ切れ始めていると・・・・。
それは嘘ではない・・・本当に吹っ切るつもりでいたから。

「だからね・・・もう終わった事だから・・・だからマリアちゃんが気を使う事じゃないのよ。マリアちゃんが見送りに行きたいと思うのなら、私はついて行くわ。だって私は今、マリアちゃんのガードなんですもの。」
「お姉様・・・・・・・。」

キョーコの想いと決断を聞いたマリアは、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。

「マリアちゃんがそんな顔する事はないのよ。ほら、もうすぐクッキーが焼けるわ。」

オーブンから漂うクッキーの香りに、キョーコは立ち上がるとそちらに向かう。
キッチンミトンを着け、キョーコはオーブンの中を覗き込むと、マリアに気づかれないようにオーブンの扉に映る自分の表情をチェックした。

――――― 大丈夫・・・変な顔してなかったわよね。

これ以上マリアに余計な心配をさせたくない。
あれから半年、気持ちの整理はつけたつもりだ。
今なら顔を見てもきっと大丈夫だと思う・・・顔を見てもあの想いはもう蘇ったりしないはず・・・。
それに返さなくてはならない物が、未だにキョーコの右薬指に光っている。

「蓮様に返さなくちゃいけないものもあるし・・・見送りに行きましょ。」

これを返せば、完全に蓮と決別できると、キョーコはそう信じていた。

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