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古城の華(1)

2009/08/23 (日)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

「最上さん、そんなにはしゃいでいると転ぶよ?」

蓮の声もどこ吹く風。
キョーコは間近に近付く建物に夢中だった。
今日から2時間サスペンスドラマの撮影の為にロケ地に来ていた。
もちろん主役は蓮。
舞台はドイツから移築したお城をホテルに改造した建物。
森の中にひっそりと佇んでいる。
今日から、ここに泊まるのかと思うだけで、ウキウキしてくる。

「日本にもこんなお城があるなんて知りませんでした。」
「そうだね。何でも先代のオーナーが大のお城好きで、趣味が高じて本物のお城を移築したらしいよ。」
「そうなんですか。凄いですね。」

キョーコに追いついた蓮が説明してくてた。
先々代のオーナーはドイツに住んでいた事があり、このお城にもゆかりがあったとか。

「最上さんって、お城とか好きそうだよね。」
「お城って言うよりも・・・・・・・・・・・・。」

あらぬ妄想が膨れあがる。
―――――お城では毎夜舞踏会が繰り広げられ、とある国の王子様がお城のお姫様に恋をするのよ・・・・・・・。でも、2人の恋は引き裂かれるの・・・・・・・。か、かわいそう・・・・・・。

「ヨハン~!?」

突然あらぬ方向を見ながら叫んだキョーコに蓮はギョっとなる。
またもメルヘンの国へ行ってしまったようだ。

「も、最上さん?」
「ハッ!?・・・・・・す、すみません。」

―――――また、やっちゃった・・・・・・・・。
恥ずかしくて顔が上げられず、俯いたまま歩いていく。

「蓮、キョーコちゃん。俺先に行ってチェックインしてくるから。」

後ろから追いついた社が、立ち止まって話す・・・・・蓮とキョーコの横をニコニコしながら通り過ぎる。

「えっ?社さん。私も行きます。」
「いいよ、いいよ。今回俺は同じ事務所として、キョーコちゃんのマネージャーも兼ねてるからね。」
「でも・・・・・・・・。」
「いいから、いいから。蓮と一緒にゆっくりおいで。」

“ゆっくり”を強調され、ニヤニヤしながら社はお城に入っていった。

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古城の華(2)

2009/08/25 (火)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

一人でワクワクしながら城の中を歩いていく。
時折、出会うスタッフと挨拶を交わしながら、パンフレットを頼りにお城の中を見て回った。
豪華なシャンデリアのある応接室、ダンスパーティーが開かれていたであろうホール。
否応無くキョーコをメルヘンの世界へと誘っていく。

「天蓋付きベットの部屋もあったんだ・・・・・いいなぁ。」

パンフレットの部屋紹介を見ながら、愚痴をこぼす。
長い階段をどんどん登って行くと見晴らしのいいバルコニーで出た。
緑に囲まれたホテルの景色は、先ほど階段を登った疲れも吹っ飛ぶほど爽快。
背伸びをしながら、景色を楽しむ。

「そうだ!!ここで台本でも読もっと。こんな所にわざわざ来る人もいないだろうし。」

踵を返し、階段を駆け下りていく・・・・・・しかし、さすがに100段以上ある階段を先ほど登ってきただけに、足は思った以上に疲労したいた。

「きゃぁ!?」

思いっきり階段を踏み外した。
―――――お、落ちる~!?
目を閉じ歯を食いしばった瞬間・・・・・・“ドンッ”
―――――あれ?止まった・・・・・・?しかも、この香り・・・・どこかで・・・・・。
恐る恐る顔を上げると、そこには少し焦った蓮の顔があった。

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古城の華(3)

2009/08/29 (土)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

少し時間の遅かったせいもあるのか、やはり温泉には誰もいなかった。
部屋のお風呂もアンティークで良かったのだが、やはり疲れを癒すには温泉だろう。
しばし、広い湯船を独り占め。

「それにしても・・・・・・敦賀さんあれからどうしたかな?」

ボンヤリ先ほどの気まずい食事の事を思い出して、ため息をつく。
気まずすぎてゆっくり味わって食べれなかった。

「ロケに行く度あんな感じなのかしら?社さんも大変だな・・・・・・・。」

独り言がお風呂場に響き渡る。
誰もいない貸切状態の温泉を暫く満喫する。

「そろそろ上がろっと、明日に備えて早く寝ないとね。」

髪を乾かすのもそこそこに温泉の入り口の扉を開けると、予想外の人物がそこにいた。

「つ、敦賀さん!?どうしたんですか?そんな所で?」
「え?いや・・・・・・その・・・・・・」

温泉に入った人がくつろげるスペースに蓮が座っていたのだ。
実は後から合流したスタッフ達に未亜を押し付け、フェードアウトし部屋に戻ろうとした時にキョーコが温泉に入るのを見かけて待っていたのだが・・・・・・・そんな事、言えるわけも無く・・・・・・キョーコの問い掛けにしどろもどろしている。
しかも、出てきたキョーコの濡れ髪姿に、己の理性が葛藤していた。
思わず、抱きしめたい衝動に掻きたてられるのを、少ない理性で押さえ込む。

「もしかして、敦賀さんも温泉に入りに来たんですか?」
「ああ・・・・そう・・・・そうなんだ。・・・・・でも、込んでるみたいでね。」

そう言いながら蓮はキョーコと目が合った。
その瞬間、抑えていた理性が吹っ飛んだ。

「最上さんこそどうしたの?髪も乾かさないで?」

座ったまま、キョーコの濡れ髪にそっと手を伸ばし指に絡める。
その妖艶な表情と仕草にキョーコは瞬く間に固まった。
それはまさしく夜の帝王。
しどろもどろしながら、何とか言葉を搾り出す。

「あ、あしたに・・・・・・・備えて・・・・・早く休もうと思いまして・・・・・・・・・。」
「そう。でもちゃんと乾かさないと風引くよ?」

蓮の表情に耐え切れなくなったキョーコは俯きながらそう言うのが精一杯。
―――――私、苦手なのよ・・・・・・夜の帝王の敦賀さんって。座ってるから顔が・・・・・近いし。
髪に触れる指先に、心臓の鼓動が早鐘の如く鳴る。
それを聞かれたくなくて、少ない気力を振り絞り、思わず一歩下がった。

「最上さん?どうかした?」
「い、いえ・・・・・敦賀さん、そろそろ戻りませんか?」

キョーコに一歩退かれた事に軽くショックを受けながらも、キョーコが一歩手の届かない所に離れてくれた事で、我に返ったのか心の隅で少しホッとしながら、このまま此処に居るのもまずいと思い部屋に送る事に。

「でも・・・・・・敦賀さんが温泉って・・・・・何だかイメージわきませんね。」
「そうかな?」

キョーコは想像して笑ってしまう。
―――――だって・・・・・頭にタオルとか乗せてる敦賀さんって・・・・・・。

「っぷぅ~!?」

自分の想像に噴出してしまう。
―――――ナイナイ・・・ありえないって。あの敦賀蓮よ?

「何かな?その笑いは・・・・・・。」

蓮は怪訝な顔でキョーコを見やる。

「最上さんが何を思ったか知らないけど、俺だって温泉くらい入るよ?」
「・・・・・・そうですよね・・・・・・・すみません。」

恐縮して謝った。
蓮はと言えば、キョーコになにやら偏見をもたれた事に大いに凹む。

「送っていただいて、ありがとうございました。」
「いや、いいんだよ。それじゃ、明日ね。」
「はい。おやすみなさい。」
「おやすみ。」

蓮はキョーコと別れ廊下を歩きながら自分を誉めていた。
―――――偉いぞ俺。もう少しで最上さんに手を出すところだった・・・・・。濡れ髪は反則だろう?
そんな事を思いながら、自室へと戻っていった。

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古城の華(4)

2009/09/01 (火)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

キョーコを迎えに来た蓮と社は、ノックして出てきた人物に驚いた。
出てきたのはキョーコではなく、由美子だったのだ。

「キョーコちゃん・・・・・・の部屋だよね?ここ。」
「それが・・・・・実は昨日・・・・・・・・・。」

改めて教えられた部屋に足早に向かう。
由美子の話から、部屋を換わったことを知らされた2人はそれぞれの思いを胸に歩いていく。
―――――まったく、キョーコちゃん・・・・・部屋換わったんなら教えてくれなくちゃ・・・・・・。
―――――まったく・・・・・最上さんは・・・・・幽霊が出るなんて部屋になんか泊まって・・・・・何かあったらどうするんだ!?

改めて扉をノックすると、ひょっこりキョーコが顔を覗かせた。
その顔は少し疲れているようにも見える。

「キョーコちゃんおはよう。聞いたよ?由美子ちゃんと部屋換わったって。言ってくれないと困るよ。蓮が間違って訪ねていったら大変な・・・・・・。」

社はそこで言葉を止める。
蓮が横から冷たい眼差しで無言の威圧をしてくるから、最後まで言葉がいえなかったのだ。

「す、すみません・・・・・・・。つい・・・・・うっかり。」

その様子を蓮は黙ってみている。
蓮にも怒られるのかと思いきや、何も言わない事に逆に心配になり思わず聞かずにはいられない。

「あの・・・・・・敦賀さん・・・・・・やっぱり怒ってますか?」
「えっ?いや・・・・・最上さん、体はなんとも無いの?」
「体ですか?別になんとも無いですけど?」

蓮が何を言いたいのか分からず、小首をかしげる。
察した社が蓮の代わりに説明してくれた。

「心配したんだよ。幽霊がでる部屋と換わったんだって?」
「はい・・・・・。」
「で、どうだった?」

社は心配しつつ、興味もあるようだ。
蓮も非科学的な事ではあるものの、何があってもおかしくない世の中だけに心配している。
話は朝食をとりながらも続いていた。

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古城の華(5)

2009/09/04 (金)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

キョーコは撮影の合間に男性の共演者から、スタッフにいたるまで、暇があれば片っ端から話しかけていた、蓮と社を除いて・・・・・。
エミリアの相手を見つけるために、ついでに蓮達の近くに居なければ未亜に睨まれる事も無いだろう。

「れ~ん~。面白くなさそうな顔してるけど?」

一昨日からの光景に正直うんざりしていた蓮に社が絡む。
蓮で遊ぶ気満々の顔をしている社に、聞こえないため息をついた。
確かに、エミリアのデートの相手を探すのに自分が除外されているのは些か面白くない。
だからといって、もし選ばれたとしても、キョーコであってキョーコでない相手とデートするのも複雑な心境だ。
選ばれるとは限らないのだが・・・・・・。

「別に何でもありませんよ。そんな事より、社さん最上さんに付いていなくて良いんですか?一応マネージャーなんですよね。」
「そうだけど・・・・・・俺が蓮から離れたら・・・・・・・。」

そう言いながら目配せした先には、蓮を狙う女優陣達がこちらの様子をうかがっている。
しかし、蓮は自分の事よりキョーコの事が心配で仕方ない。
只でさえ、撮影意外は朝食の時しかまともに話していないのだ。

「社さん・・・・・俺は自分でなんとかしますから、最上さんについててあげてくれませんか?」
「俺はいいけど・・・・・・蓮は大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。とにかく彼女の事を、変に勘違いする輩がいないとも限りませんからね。」
「わかったよ。蓮がそう言うんなら、俺はキョーコちゃんのボディーガードになってくるから安心しろ。」
「お願いします。」

話を終えて社はおもむろにキョーコに近付き、共演者と話すキョーコの会話に加わる。
蓮はといえば、社が居なくなった瞬間、女優陣に囲まれてしまった。
その様子を見ていた新開が蓮を不憫に思ったのか仕事に託けて蓮を呼ぶ。

「珍しいなぁ、マネージャーはどうしたんだ?」
「社さんなら、あそこに居ますよ。」

蓮が目配せした所に、共演者と話し終えたキョーコと社が楽しそうに何か話をしている。
新開は“ヒュ~”と口笛を吹きながら蓮を見る。

「蓮、寂しいんじゃないのか?マネージャーをキョーコちゃんに取られて・・・・いや逆か。マネージャーにキョーコちゃんを・・・・・・・」
「何がおっしゃりたいんですか?」

凄む蓮に、お手上げといった感じで新開はそれ以上言葉を続けるのをやめキョーコを見やる。

「それにしても、一昨日からキョーコちゃんあの調子だけど、何かあったのか?」

それには答えず蓮は相変わらず仲良く話す2人に少し苛立ちを感じていた。
―――――社さん・・・・・あなたホントに俺の味方なんですか?
思わず黒い感情が沸きあがるが、社に嫉妬しても仕方が無い。

「蓮・・・・・蓮?」

新開の問いかけに何事も無かったかのように応対する。

「ああ、すみません。最上さんはちょっと訳ありなんですよ。」
「訳ありねぇ・・・・・・。まぁ、撮影に支障は無いからいいけど。話の流れでいい感じにやつれてる感もでてるし。」

確かに、話の中盤で城に招待された人達が次々と殺されていき、妹役のキョーコは兄が犯人かも知れないと葛藤して憔悴していくのだが・・・・・・・。
今のキョーコは毎晩幽霊と話しているのだから、やつれて当然である。
―――――最上さん・・・・・・・。
このホテルに滞在する予定はあと2日・・・・・。
その間にエミリアの願いを叶えられるのだろうか?

「キョーコちゃん、最近夕食を一緒に食べてないけど、何かあったの?」

心配そうに社が問いかける。
エミリアの相手を探し始めてから、蓮達と夕食を一緒に摂らなくなったのだ。
いくら誘っても、何かと理由をつけて断られていた。

「何でもありませんよ。」
「ホントに?蓮には内緒にしてあげるから、俺にはホントの事いってよ。これでも一応臨時とは言えマネージャーなんだからね。」

社は笑ってそんな事を言ってくれた。
本当に心配してくれているのだろう。
黙っているのが心苦しくなる。

「・・・・・・・実は、社さん・・・・・絶対敦賀さんには内緒ですよ。」

キョーコは思い切って未亜に言われた話を社に話した。
黙って聞いていた社は、話し終わるとため息をつく。

「そんな事言われたの・・・・・・・。ごめんね、キョーコちゃん。蓮のせいで嫌な思いさせちゃったみたいで。でも、蓮はそんな事思ってないよ。」
「そうでしょうか?やっぱりご迷惑だったんじゃないでしょうか?」

いくら社がそう言ってくれても、本心は未亜の言ったとおりかもしれない。

「社さん、やっぱり私、朝食も別で食べます。」
「えぇ!?キョーコちゃん、困るよ。俺が怒られるって・・・・・。」

哀願するように社はキョーコに頼み込む。
でも、キョーコもここで引く訳には行かなかった。
折角の現場で揉め事を起こすわけにも行かない。

「社さん、明日から迎えに来なくていいですから。」
「えっ!?ちょっと待って!?キョーコちゃん!?」

キョーコは撮影に入る為、焦る社をその場に残し現場に入っていった。

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古城の華(6)

2009/09/09 (水)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

いつもよりゆっくり起床したキョーコはベットの上で伸びをした。
久しぶりにぐっすり眠った気がする。

「今日は午後から撮影だから、ご飯食べてから久しぶりに探索に行こうかな。」

服を着替え、カフェテリアへと向かう。
階段を下りながらエミリアの肖像画を見て、不思議な気分になる。
―――――昨日はあんまり話せなかったなぁ。
今日も会えないので、少しつまらない。
カフェテリアに入ると、丁度蓮と社が食事を終えて出てくるところだった。

「キョーコちゃん、おはよう。もしかして、今起きたの?」
「はい・・・・・・なんか昨日はグッスリ眠ってたみたいで・・・・・・疲れてたんですかね。」

そう言いながら照れ笑いをする。
その表情に蓮も社も少しホッとしていた。
昨日より幾分顔色がいい。

「最上さん、昨日はお姫様に会わなかったの?」
「エミリアにですか?会いましたよ。でも、昨日はすぐに眠ってしまったみたいで・・・・・・。今日は出てこないみたいですし・・・・・。」

しょんぼりしながらそう話す。
その時キョーコの腹の虫が激しく鳴いた。

「/////////す、すみません・・・・・。」
「いや、こっちこそ引き止めてごめんね。」

そう言って社は蓮を促しレストランを出ようとした・・・・・が蓮は動く気配がない。

「蓮?」

不思議に思い、蓮を見ると・・・・・社は危険を察知した。

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古城の華(7)

2009/09/15 (火)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

午後からの撮影にキョーコの姿が見当たらない。

「キョーコちゃん、どうしたんだろう?いつもなら誰よりも先に来てるのに・・・・・。」

首を捻りながら社は考え込む。
確かに、いつものキョーコならスタッフよりも先に来て待っているほどだ。
そのキョーコが、撮影時間になっても現れないのはおかしい。

「社さん、部屋で何かあったのかも知れませんから、見て来てもらえますか?」
「ああ、分かった。ちょっと行って来るよ。」

蓮は心配だが、現場を離れる事はできない。
仕方なく、自由に動ける社に頼む事しかできない。
こんな時、とっさに探しにいけない自分の立場がもどかしい。
社は女性スタッフと共にキョーコの部屋へと向かった。

「まだ来ないの?まったく、これだからポットでの新人は困るのよね。」

スタッフ達に聞こえるくらい大きな声で未亜がキョーコを非難する。
その言葉に、誰もが聞こえないフリをする。

「先輩を待たせるなんて、非常識だわ。そう思わない?敦賀くん。」
「確かに、時間どうりに来ないのは非常識ですね。でも彼女が遅れるなんて・・・・・なにかあったのかもしれませんね。」
 
誰も、無反応なのが気に入らない未亜はあえて蓮に話をフル。
いくら後輩でも、仕事に厳しい蓮なら、同意してくれるはずと。
帰ってきた返事はキョーコを庇う蓮の言葉・・・・・・・未亜は面白くない。

「敦賀くんは優しいのね。来ない後輩を庇うなんて。」
「そんな事はないですよ。ただ、彼女の性格を考えると遅れてくる事は考えにくいですから。」
「仲が良いのね。羨ましいわ。」

そう言いながら、未亜は笑顔で蓮に微笑みかける。
しかし、蓮に見えない方の手の拳は強く握り締められていた。
未亜は悔しくてたまらない。

「とにかく、キョーコちゃんが居ないシーンから撮っていこうか。」

新開の言葉にみんなそれぞれ仕事の位置につく。
だからと言って、キョーコ無しの撮影は限られている。
蓮もキョーコを心配ながらも、仕事と割り切り位置につく。
皮肉にも今から撮影するシーンはキョーコ演じる“マリ”がホテルから行方不明になりそれを探すシーンだった。

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古城の華(8)

2009/09/19 (土)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

「監督・・・・・・実は・・・・・少し気になる事があるんですけど。」
「気になる事って?」

スタッフがキョーコを探している間、未亜はキョーコの悪口をマネージャーに散々浴びせていた。
そんな様子を見ながら、由美子は新開に現場に来る前にあった事を話し始めた。

「実は・・・・・・私の部屋と京子さんの部屋、換わってもらったんですけど、京子さん宛てに電話がかかってきたんです。」

そう言いながら、由美子は声を潜める。
新開も、興味深げに由美子の話に聞き入る。

「京子さんと部屋を換わったって伝えたら、慌てて切られちゃって。」
「で、その電話の相手って?」

言いにくそうに由美子はチラリととある人物に目を配らせた。
その視線を新開は追っていく。

「名乗らなかったんですけど、確かに彼女の声だったような・・・・・・・。自信ないんですけどね。」
「そっか。ありがとう由美子ちゃん。この事、誰かに言った?」
「いいえ、もし間違ってたら大変な事になりますから・・・・・・・・。」

首を振りながら、由美子は苦笑する。
確かに、もし違っていたら何を言われるか分かったもんじゃない。

「とにかく、この事は此処だけの話って事にしといてくれるかな。」
「はい。監督がそう言うのなら。」

そういって由美子はマネージャーの所に戻っていった。
一方、新開はどうしたものかと、考えあぐねていた。

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古城の華(9)

2009/09/23 (水)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

キョーコを自分の部屋に連れて行く訳にも行かず、勝手ながらキョーコの鞄から鍵を出して部屋を空けそっと天蓋付きのベットに横たえた。
バスルームからタオルを濡らして、キョーコの額に乗せてやる。
身じろぎはしたものの、気がつく様子はない。

「エミリア、そこに居るのかな?」

その問いかけに彼女は姿を現した。

『居るわよ。キョーコは大丈夫なの?』

心配そうに動かないキョーコの顔を覗き見る。
急にエミリアの姿が見えるようになった事に今更ながら驚く。

「今、医者を連れて来てもらってるから。でも、どうして急に君の姿が見えるようになったんだろうね?」
『それは、多分あなたがキョーコを助けたい気持ちと私がキョーコを助けたい気持ちがシンクロしたからだと思うわ。』

確かに、蓮はキョーコが居なくなったので必死に探していた。
エミリアもキョーコを助けたい一身で誰かに姿を見て欲しかった。
その気持ちが蓮にエミリアの姿を見えさせたのだろう。

『でも・・・・・あなた、その姿は偽りなのね。私には違う人に見えるけど?』

さすが幽霊と言うべきか・・・・・・・・蓮は表情を強張らせながらキョーコの様子をうかがう。
まだ、目の覚める様子はない。

「確かに、この姿は偽りだけどね・・・・・・・・・。」
『でも、知られたくないのね。誰にも・・・・・・キョーコにも。』

蓮の表情からか、心情を読み取ったのかエミリアは深くは聞かなかった。
人には誰にだった触れられたくない事がある。
話を変えようと、蓮はエミリアにキョーコに何があったのか聞くことにした。

「エミリア、彼女に何があったのか知ってることでいいから教えてくれるかな?」
『いいわよ。』

エミリアが教えてくれたのは、キョーコに電話がかかってきた事。
その電話を受けてキョーコが部屋を出て行ったとの事だった。
考えを巡らしていると扉をノックする音に急いでドアを開けると医者を連れた社が立っていた。

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古城の華(10)

2009/09/30 (水)  カテゴリー/古城の華 全18話完結

社に渡されたペットボトルの水を飲み、少し落ち着く。
キョーコはベットの上で、改めて周りを見渡した。
蓮と社、新開監督が心配そうにキョーコを見ている。
もう一度謝ろうと、頭を下げたがペチっという音と共に、蓮の手によって止められてしまった。

「最上さん、もう謝らないでいいから。」
「でも・・・・・・私のせいで今日の撮影が・・・・・・・・。」

外は真っ赤に染まった夕暮れ。
午後からのロケが、自分のせいで台無しになってしまったのだ。
情けない声を出しながら再び謝ろうとした時、新開が口を挟んだ。

「それなら、良いシーンが撮れたからいいよ。」
「良いシーン・・・・・ですか?」

言ってる意味が分からず、キョーコは戸惑いの声を上げながら新開を見た。
それに対して新開はニヤリと蓮を見ながら、先ほど蓮がキョーコを助け出した一部始終を撮っていた事を話して聞かせた。

「監督・・・・・あんなの撮ったんですか?」
「おうよ、あんな必死な蓮、滅多にお目に掛かれないだろう?後でアフレコしろよ。」

楽しそうに笑う新開に蓮も社もゲンナリしていた。
キョーコには何が何だか分からない。
それもそのはず、気を失っていたのだから。

「今の所、順調に進んでるから、後は明日で全部撮り終えられると思うよ。」
「本当にご迷惑を掛けてすみませんでした。」

監督の話に、ホッとしたのもつかの間。

「もう謝らなくてもいいから。それより最上さん、一体何があったの?」
「えっ・・・・・・・あの・・・・・・その・・・・・・・・。」

ストレートな蓮の物言いに、社も新開もキョーコ本人も焦る。
今、気がついたばかりのキョーコに真実を聞く事はまだ無理だろう。
キョーコも何をどう説明すれば良いのか分からず口ごもる。

「蓮、今日の所は・・・・・・・・。」
「ですが、最上さんのせいで撮影が遅れた事も事実ですし・・・・・・真相を話す責任はあるんじゃないですか?」

厳しい口調でキョーコに詰め寄る蓮に、新開は軽くため息をついた。

「それなら、俺が聞いとくから。」

手のひらをヒラヒラさせながら、出て行くように促す。
その言葉にそうですかとあっさり引く訳にはいかない。

「監督、俺にも聞く権利はあると思いますけど?」
「お前のその顔を見て、キョーコちゃんが脅えてるだろう。」

理由を言わないキョーコに少し苛立っていた所に、新開から出て行けと言われては心穏やかではいられない。
蓮の怒りのオーラを敏感に感じ取ったキョーコはオロオロしている。

「どうする、キョーコちゃん?」
「・・・・・・・・お、お、お話します。」

怒りオーラ全快の蓮に勝てるはずもなく、キョーコは迷った末どうせ他人から秘密が漏れるくらいなら自分の口で言った方がいいと思い、重い口を開いた。
出来れば、蓮にはあまり聞かせたくない話も含まれている。
だが、こんな所で蓮の信頼を失いたくはない。
怒られるのを覚悟でキョーコは話し始めた。

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